『いろどり 生活の日本語』とは?
国境を越えた人の移動や往来が盛んな今日、日本国内でも、さまざまな分野で働く外国人の数が年々増えています。在留資格「特定技能」制度も始まり、今後は、いろいろな国籍や文化的背景を持つ人々が、同じコミュニティで生活し、同じ職場で働く機会がますます多くなるでしょう。
日本語コースブック『いろどり 生活の日本語』は、外国の人が日本で生活や仕事をする際に必要となる、基礎的な日本語のコミュニケーション力を身につけるための教材です。
「いろどり」には、「色をつける」という基本的な意味から派生して、「物事の様子や姿、形に変化を与え、美しさやおもしろみを増す」という意味もあります。日本での毎日が、隣人や同僚など身の回りの人たちとの会話や交流を通じて彩り(いろどり)豊かなものになることを願い、それを言葉やコミュニケーションの面からお手伝いしたいという想いを込めて、このタイトルをつけました。
これから日本に来る人は、来日までに「できる」ようになったほうがいいことを学ぶために、すでに日本で生活している人は、自身の日本語力を確認し、さらに「できる」ことを増やすために、それぞれの目的に応じてご利用いただけます。
この教材の構成
『いろどり』は、「入門(A1)」「初級1(A2)」「初級2(A2)」の3部からできています。それぞれの教材には、以下のものがあります。
- 本冊(PDF)
- 表紙
- はじめに(日本語・英語)
- この教材の使い方(日本語・英語)
- 内容一覧(日本語・英語)
- 第1課~第18課
- Can-doチェック
- 奥付
- 音声ファイル(MP3)
- 第1課~第18課
- 付属教材・資料
- 解答、語彙表、教え方の手引きなどを、公開予定です。
この教材の使い方
1各課の構成
「入門」「初級1」「初級2」は、それぞれが9つのトピック、18課から構成されています。1課あたりの授業時間の目安は、150~180分です。ただし、課によって活動の数が違うので、それに合わせて、授業時間数を調整してください。
各課の構成は、次のとおりです。
- トピックと課のタイトル
- 導入の質問
- その課で取り上げるテーマについて、具体的にイメージするための質問です。自分の経験を振り返ったり、クラスで話し合ったりします。
- 活動
- Can-doを達成するための活動で、この教材の中心となる部分です。各課に3~6の活動があります。この活動を行うことによって実際に使える日本語が身につきます。
- 聴解スクリプト
- 漢字のことば
- 活動の中に出てきた漢字のことばを勉強します。(「入門」の1課ではひらがなを、2課ではカタカナを勉強します。)
- 文法ノート
- 各課で勉強する文型や表現についての説明です。(「入門」の1課、2課にはありません。)
- 日本の生活TIPS
- 活動の中に出てきた日本文化や日本事情についての説明です。
2活動内容と進め方
- (1)活動の種類と目標
-
各課には、「話す」「聞く」「読む」「書く」の4種類の活動があります。各活動は、それぞれ独立していますが、ひとつの課の中で緩やかに関係しています。課によって、活動の数や種類、またその配列が違いますが、全体としては、話す活動が多いです。4種類の活動の全体的な目標は、次のとおりです。
- 話す
- 身近な場面で質問したり質問に答えたり、自分のことや身近なことについて簡単に説明したりできるようになることが目標です。
- 聞く
- 日常会話の中で相手の話から大切な内容を理解したり、簡単なニュースや公共のアナウンスなどを聞いて、必要な情報を聞き取ったりできるようになることが目標です。
- 読む
- 日常生活の中でよく目にするお知らせや公共施設の掲示、飲食店のメニューなどから必要な情報を読み取ったり、外国人向けのやさしい日本語で書かれたパンフレットなどを読んで、内容を理解したりすることが目標です。
- 書く
- 日常生活で必要なフォームに記入したり、友人などにメッセージを送ったり、身近なできごとについて簡単にSNSに書いて発信できるようになったりすることが目標です。
- (2)すべての活動に共通する進め方
-
それぞれの活動は、次のような手順で行います。
- Can-doの確認
- その活動のCan-doを見て、できるようになることを確認します。
- 活動
- 「話す」「聞く」「読む」「書く」の活動を行います。
- Can-doチェック
- 巻末のCan-doチェックを使って、Can-doが達成できたかどうかを自己評価します。そのCan-doをどのくらい達成できたと思うか、学習者1人1人が自分でチェックします。コメント欄には、活動の感想やこれからやってみたいことなどを、自由に記入します。Can-doチェックは、ひとつの活動が終わるごとに書いても、その課の学習が終わったときにまとめて記入してもいいです。
- (3)「話す」「聞く」「読む」「書く」活動の進め方
話す活動
-
Can-doの確認
-
ことばの準備
活動に必要なことばを勉強します。活動によって、ある場合とない場合がありますが、次のような手順で進めます。
-
イラストを見ながら音声を聞いて、意味を確認する
-
音声を聞いて、まねして言ってみる
発音を確かめることが目的で、覚えることが目的ではありません。
-
音声を聞いて、内容に合うイラストを選ぶ
聞いて意味がすぐにわかるかどうか確かめます。意味と形を結びつけられるようになることが目的です。
-
会話例を聞く
活動の到達目標(Can-do)は「話す」ことですが、まず、Can-doを達成するための会話例を聞いて、会話の内容をだいたい理解します。この段階では、文法や表現について詳細に理解する必要はありません。
会話例には、活動によって、「いくつかの異なる場面で、比較的短い会話をいくつか聞く場合」と「ひとつの場面で、比較的長い会話を聞く場合」があります。原則として、前者の場合は、スクリプトが本文にはなく、後ろに「聴解スクリプト」としてついています。後者の場合は、スクリプトが本文に書いてあります。
それぞれの進め方は、次のとおりです。
<会話スクリプトが本文にない場合>
- 聞く前に、どんな場面でどんなことについて話しているのかを確認する
- 会話を聞いて、質問に答えながら、大切な内容を理解する
- 新しいことばや表現の意味を確認してから、もう一度聞いて、少しくわしく内容を理解する
<会話スクリプトが本文にある場合>
- 聞く前に、どんな場面で、誰と誰が話しているかを確認する
- スクリプトを見ないで聞いて、質問に答えながら、だいたいの内容を理解する
- スクリプトを見ながら聞いて、よりくわしい内容を理解する。このとき、新しいことばや表現の意味もいっしょに確認する
-
形に注目
Can-doの達成に必要な文型や表現を勉強します。
-
文型や表現に注目する
会話例の中で、注目してほしい文型や表現の部分に下線を引いて空所にしてあります。
音声を聞いて空所にことばを書き入れ、どう言っていたのか、形(言語形式)に注目します。
-
文型や表現の意味・使い方を考える
文型や表現の意味や使い方を考えるための質問 に答えます。教師が先に文法の説明をするのではなく、まず学習者が自分自身で考え、日本語のルールを発見します。
→そのあとで、「文法ノート」の例文や説明を読んで、確認します。
-
形に注目して、もう一度会話例を聞く
ここで勉強した文型や表現が会話の中でどのように使われていたのか、会話例をもう一度聞いて、確認します。
-
話す
この活動の到達目標(Can-do)となる部分です。少しずつ、段階的に練習します。
-
モデル会話を聞く
Can-doを達成するための会話のモデルである「吹き出し会話」を見ながら、音声を聞いて、談話の流れや表現を確認します。
-
シャドーイングする
なめらかに話せるようになるための練習です。はじめは「吹き出し会話」を見ながら、シャドーイングします。何回か繰り返し、最後は「吹き出し会話」を見ないでシャドーイングします。
-
練習する
次の「4.自由に話す」の準備です。ある場合とない場合があります。「吹き出し会話」のことばを入れ替えたり、3の会話例の内容を使って話したりします。
-
自由に話す
自分のことについて自由に話したり、ロールプレイをしたりします。「吹き出し会話」のことばを入れ替えるだけでなく、言いたいことについて自由に話します。必要なことばは、辞書やスマホなどを使って調べましょう。
-
Can-doチェック
聞く活動
活動の進め方は「話す」と似ていますが、到達目標(Can-do)が聞いて理解することなので、聞いて必要なことが理解できれば目標達成です。
-
Can-doの確認
-
ことばの準備
聞く前に、知っておいた方がいいことばを勉強します。活動によって、ある場合とない場合があります。進め方は「話す」活動の場合と同じです。
-
聞く
この活動の到達目標(Can-do)となる部分です。
-
設定を確認する
聞く前に、イラストなどを見ながら、どんな場面で、何のために、何を聞くのかを確認します。
-
内容を段階的に理解する
質問に答えながら、大切な内容を理解します。「内容に合ったイラストを選ぶ」「キーワードを選ぶ」「要点をメモする」「〇×をつける」など、活動によっていろいろな練習があります。聞いたことがすべてわかる必要はありません。質問に答えることができればCan-do達成です。
-
ことばを確認してもう一度聞く
少しくわしい内容について聞き取るための、発展的な活動です。教科書に載っている新しいことばや表現の意味を確認してから、もう一度聞きます。少し難しいことばもあるので、すべてを覚える必要はありません。
→さらにわからない点を確認したいときは、後ろの聴解スクリプトを見るといいでしょう。
-
形に注目
聞いて理解したことの中から新しい文型や表現に注目して勉強します。進め方は、「話す」活動の場合と同じです。ただし、新しい文型や表現がない場合は、このコーナーはありません。
-
Can-doチェック
書く活動
-
Can-doの確認
-
書く
-
設定を確認する
書く前に、どんな場面で、何のために、何を書くのかを確認します。
-
例を読む
例がある場合は、例を読んで、どんなことを書けばいいかを具体的にイメージします。直前にある読む活動がモデル(例)になる場合もあります。
-
書く
実際に書くときは、フォームに記入する場合のように手書きで行うものもあれば、メッセージを送る場合のようにスマホやキーボードで入力するものもあります。メッセージやSNSは、できるだけスマホやキーボードで実際に入力して、送信したり投稿したりしてみるといいでしょう。
-
書いたものについて、フィードバックをもらう
書いたものをクラスで読み合って、コメントをしたり、返信したりします。読み手の立場からのフィードバックをもらうことで、「書く」活動を読み手を意識した実際のコミュニケーション活動へと繋げます。活動によって、ある場合とない場合があります。
-
Can-doチェック
3そのほかのコーナーの内容と進め方
- 漢字のことば
- 初級レベルの漢字を、ことばの中で練習するコーナーです。日常生活において、必要な漢字の意味が見てわかり、また必要な場合には、スマホやPCで漢字が入力できるようになることが目標です。
- 各課では、活動の中に出てきたことばの中から、漢字のことばを10程度取り上げます(「入門」「初級1」「初級2」で勉強する漢字は、合計で429字です)。次の手順で進めます。
-
読み方と意味を確認する
漢字の読み方に注目しながら、ことばの意味を確認します。漢字は、3種類の字体で書かれています。いろいろな字体に慣れてもらうためです。
-
文の中で読む
漢字のことばが含まれている文を読んで、読めるか、意味がわかるかを確認します。
-
入力する
最後に、学んだ漢字のことばを、自分のスマホやタブレット、キーボードなどで入力して、漢字が正しく入力できることを確認します。ここでは漢字を手書きできるようになることは求めていませんが、漢字に興味のある学習者が、手書きも練習したいという場合は、自由にさせてください。
なお、「入門」の1課と2課には、「漢字のことば」に代えて「ひらがなのことば」「カタカナのことば」があります。
- 文法ノート
- 各課で勉強する文型や表現についての説明です。各活動の「形に注目」の文型や表現が取り上げられています。説明を読めば、「形に注目」の質問の答えがわかるようになっています。
- 各課で取り上げられている項目ごとに、形(言語形式)とその意味、その課のどんな場面で使われているかが説明してあります。また、この教材の活動では扱われていない使い方などの発展的な情報、追加の例文があります。必要に応じて、活用形などをまとめた表、類似表現の比較などもあり、文法の知識が整理できるようになっています。
- 授業では、活動の「形に注目」で、文型や表現の使い方について学習者が自分で考えたあと、このコーナーの説明を読んでもいいですし、このコーナーを使って教師が説明してもいいでしょう。また、授業では、簡単に触れるだけにして、説明は宿題として各自が読むというやり方にすることもできます。
- なお、この教材には、文法の定着を目的とした練習はありません。必要に応じて、『まるごと』の「りかい」など、ほかの教材を使って補ってください。ただし、文法の練習が、目標となるCan-doとまったくかけ離れた練習にはならないよう、目標となるCan-doを意識した練習をしましょう。
- このコーナーの説明は、英語(または媒介語)で読むことが前提となっています。日本語は教師の参考用ですので、学習者がここの日本語を読んで理解する必要はありません。
- 日本の生活TIPS
- 日本の生活に役に立つ知識を、コラムとしてまとめています。写真やイラストを豊富に使いながら、楽しく日本の生活や日本文化についての知識が得られるようになっています。
- 各課の項目は、本文で扱われているものの中から、日本に行ったことがない学習者にとって説明があったほうがいいと考えられるものを中心に取り上げています。また、それ以外にも、日本で生活する上で知っておくと役に立つ参考情報も載せてあります。活動のあとで、自分で読んだり、クラスで扱ったりするといいでしょう。また、活動を進める上で、説明が必要な項目が出てきたときに、このコーナーを参照することもできます。
- なお、このコーナーも「文法ノート」と同様に、英語(または媒介語)で読むことが前提となっています。日本語は教師の参考用ですので、学習者がここの日本語を読んで理解する必要はありません。
制作
- 制作
- 独立行政法人国際交流基金日本語国際センター
- 執筆
- 磯村一弘 藤長かおる 伊藤由希子 湯本かほり 岩本雅子 羽吹幸 古川嘉子 (日本語国際センター専任講師)
- イラスト・活動用素材
- えびてん SMILES FACTORY 野間耕三 畠中美幸 フクハラミワ 松橋てくてく
- ナレーション
- 五十嵐由佳 久保田竜一 出先拓也 堀田智之 水原英里 (俳協)
- 素材提供
- アサヒ飲料株式会社 株式会社アフロ(株式会社講談社, 株式会社東洋経済新報社,
- 株式会社日刊スポーツ新聞社, フランス通信社, 株式会社毎日新聞社, 森松輝夫,
- 株式会社読売新聞グループ本社, ロイター) オーケストラ・ダヴァーイ
- 大阪市立図書館 オンコ株式会社 京王電鉄株式会社 京王電鉄バス株式会社
- 株式会社講談社 公益社団法人さいたま観光国際協会 財務省 魚屋株式会社
- サントリーホールディングス株式会社 出入国在留管理庁 株式会社スタジオジブリ
- 株式会社力の源ホールディングス 公益財団法人戸田市国際交流協会
- 株式会社中川鉄工所 日南町総合文化センター 日清食品ホールディングス株式会社
- 日本郵便株式会社 ピクスタ株式会社 株式会社フォーチュン 医療法人社団寿光会 岬病院
- 八坂神社 公益財団法人祇園祭山鉾連合会
- 編集協力
- 株式会社凡人社
- ウェブサイト
- 株式会社ブレイン